ブレスレットのヨレ
金属のブレスレットは腕につけていれば常に擦れ合っており、
長い年月が経てばそれはそれは大きな緩みとなります。
それ以外の要因もございますが…
ここではブレスレットのヨレについてご説明致します。
キズや年式・付属品の有無のみが査定に影響すると思われがちですが、
実はブレスレットのヨレも大きく査定金額に関わってまいります。
ヨレって何って?その…緩みと言いますかガタつきと言いますか…とりあえず最後まで見て下さい。

ヨレやすいブレスレットの代表格、ロレックスのジュビリーブレスレットです。
こちらのお時計はほとんど使われていなかったため、販売されてから30年近く経た今でも新品当時とほぼ変わらない姿をしています。
こちらも同じような年代に販売されたものです。
上のお時計よりは若干ブレスレットがヨレていますが、まだまだ状態としては良い方です。むしろ30年近くほぼ毎日つけていらっしゃってこの状態は称賛されるべきでしょう。


このくらいブレスレットのヨレが大きくなってくると、だいぶ使ったなといった印象を受けますが、お客様曰く、週に2~3回の使用とのこと。あっ、因みにこのお時計も上の2本のお時計と同じ年代に販売されていますよ。
そう、ブレスレットのヨレは使った年数だけでなく使い方によっても大きく異なってまいります。
どうすればヨレないかって?答えは簡単です。使わないか、腕にピッタリとフィットさせて着けていればほとんどヨレません。腕が締め付けられるのが嫌などの理由でブレスレット感覚で緩く腕に着けていらっしゃる方、要注意です。多分数年でヨレてきます。
こちらはヨレにくいブレスレットの代表格、オイスターブレスレットです。
このお時計についているオイスターブレスレットは、一昔前の中空のコマではなく近年主流の無垢素材のコマを使っているため、ほとんどヨレることはありません。


なぜヨレるかは先に説明した通り、長年使っているかブレスレット感覚で緩く腕に着けているかのいずれかです。
この画像を見て下さい。コマとコマの隙間が斜めに削れてしまっているのが分かると思います。これは何を意味するかというと、緩く腕に着けていたため常にコマの一部分にのみ力が加わり・擦れ合い、その状態が長く続いたために起きてしまった現象です。
こちらの画像はもう少し引きで撮ったものです。コマとコマが連結されている部分が削れてしまっているのが分かると思います。
ブレスレットのヨレとは言っておりますが、正確にはブレスレットの削れ・歪み(=大きなキズ・変形)なのです。
ここまで話をすれば、なぜブレスレットのヨレが査定金額に大きく関わってくるかご理解いただけたでしょう。
えっ、まだ納得いきませんか?
なら最後の手段です。


これはロレックスが販売・修理取扱店(正規はもちろんロレックスに法人登録したお店すべて)にのみ配布していたメンテナンス料金表です。これを見ればオーバーホール料金のほか、外装パーツの交換費用も詳しく載っております。
この料金表は2011年のものですが、この数年後に正規販売店・技術公認店以外には配布しなくなってしまったため、おそらくこの2011年版が正規・公認店以外のお店が入手できた最後の料金表ではないでしょうか。
2012年以降のものを持ってらっしゃる方、是非ご一報を。
こちらをご覧下さい。これは現行のデイトジャスト36ミリのひとつ前の型番である116233に使われているジュビリーブレスレットの価格(税抜き)です。
実はロレックスではブレスレットにも型番があり、このモデルには63203という型番のジュビリーブレスレットが使われております。
2011年当時の116233の定価は870,000円(税抜き)。ブレスレットの定価が370,000円(税抜き)ということは……なんと時計の価格の約40%を占めているんです。
イエローゴールドを使ってるから高いんじゃないのって?


じゃあステンレスモデルも見てみましょうか。
2011年当時現行だったステンレスモデルのデイトナ116520。定価は950,000円(税抜き)。その年代のモデルに付いていたステンレスブレスレットは78590。
ステンレスブレスレットのモデルですら時計の価格の約30%を占めています。
その上の78490というブレスレット。これも同じく116520に使われたステンレスブレスレットで、116520が販売され始めたPシリアルからMシリアル辺りまで使われていました。確かバックルの形状くらいしか違いはなかったと思うのですが、70,000円も価格が違うことの方が衝撃です。
そして昨今の度重なる定価改定。2025年1月にもまた改定がございました。デイトジャスト36ミリ116233の現行モデルである126233は現在2,115,300円(税込み)。
116520の現行モデルの126500LNは2,349,600円(税込み)。
2011年の定価と比べると概ね2倍以上になっております。オーバーホールなど修理料金も現在は2倍以上になっておりますので、この2011年の料金表に載っているブレスレットなどのバーツの価格も現在では2倍になっていると考えるのが妥当でしょう。
ヨレたブレスレットを新品に交換しようとすると、身の毛も弥立つ金額が請求されることになります。

ご理解いただけましたか?
ブレスレットはロレックスの価格の3~4割を占める重要なパーツであることを。
ブレスレットの状態で大きく査定金額が変わるのは当然といえば当然です。
一つ勉強になりましたね。