文字盤の変色・劣化

文字盤の変色・劣化

ロレックスのお時計に使われている文字盤、
長い年月を経て変色・劣化する場合がございます。
それが芸術的なものであれば良いのですが…

ここでは文字盤の変色・劣化についてご説明致します。

お時計で一番見られる部分でもある文字盤、
まさにお時計の顔と言ってもいいでしょう。
そこが汚れていたら、嫌ですよね。

2枚とも同じ年代の文字盤です。

左の文字盤は販売当初と変わらぬ色味をしていますが、右の文字盤はどうでしょう。全体的に茶色く変色しています。

これが文字盤のヤケというものです。長年お時計を使っていると、日光や紫外線などで文字盤表面の塗料が変質を起こした結果という説が濃厚でしたが、実はそうでもなさそうなのです。

ヤケた文字盤の端の段差部分を見て下さい。段差部分にもヤケが見られます。

中心部分がヤケてるのだから、端の方もヤケて当然だろうと思うでしょうが、困ったことにここがヤケてしまうと日光や紫外線で変質を起こすという説とは矛盾してしまうのです。

実はこの部分、インナーリングに隠れて光が届かない部分なのです。日光や紫外線が当たらないのになぜヤケてしまうのか、未だに謎です。

さらによく分からないのが、ここ。

この年代の夜光塗料はトリチウムという放射性物質が使われておりました。よく見て下さい。なぜか夜光塗料の周りだけヤケていないのです。

不思議ですよね、まるで放射線がヤケを防いでいるようにも見えます。

もはやヤケはもらい事故と一緒です。ヤケる文字盤もあればヤケない文字盤もある。それを購入時に選ぶことは不可能ですから、ヤケたら腹をくくるしかありません。逆にヤケることで価値が上がってしまったモデルもありますし。

こちらがヤケて価値が上がるモデルの一つ。

アンティークのごく一部のモデルの黒文字盤はヤケてブラウン色に変化します。俗にトロピカルダイヤルなんて言ったりしまして、文字盤全体がきれいにブラウン化すればそれはそれはすごいお値段になります。

ただ現在は日付の枠のみ。1年粘りましたがこれ以上ヤケることはありませんでした。

これまた不思議なことに、実は端っこもヤケてるんです。このモデルの場合はインナーリングに触れている部分になりますので、光が当たると言えば当たりますが、どちらかというと影になることの方が多い部分。ここがヤケるなら中心部分はもっとヤケているはずです。

日付の枠部分はサイクロップレンズが付きますので、レンズで光が収束して通常より強い光が当たっていたからヤケたとも考えられますが、この部分に関しては謎です。

謎に付き合っていても結論は出ませんので、現実を見ましょう。

こちらはシミ。恐らく湿気でしょう。文字盤の外周にこのようにシミが出ている場合は概ねベゼル・リューズの防水不良で湿気が時計内部に混入し、文字盤を腐食させてしまいます。中心部分にも点状のシミが見受けられます。

こういったモデルを分解してみると、ベゼルやガラスの隙間にサビが出ていたり、リューズがねじ込めなくなっているものがほとんどです。その部分から湿気が混入した結果でしょうね。アンティークの非防水モデルなんかも同様です。

これはちょっと違うパターンです。文字盤のヒビになります。

ロレックスの文字盤には色の付いた塗料の上に透明なニスを塗っているモデルがあるのですが、そのニスや塗料が乾燥によって収縮し、ヒビが発生してしまうものがあります。

一昔前はスパイダーダイヤルと呼ばれ、蜘蛛の巣状に文字盤にヒビが入ったモデルが珍重されていた時期がありましたが、ただの文字盤の劣化です。そのうちヒビに沿ってペリペリ剥がれてきます。

さらに別パターン。文字盤表面が火星の地表のようになっております。緑色や黄色の粒も散見できます。塗料の溶け残りでしょうか。

このお時計はロレックスではなく姉妹ブランドのチュードルのものですが、こんな感じでボコボコになるものも存在します。かなり古いお時計になりますので、販売当時はいったいどんな状態だったのか、今となっては知る由もございません。

こちらをご覧下さい。ロレックスが発行していた2011年のメンテナンス料金表。文字盤の交換費用が載っています。

普通の文字盤でもそこそこの金額が掛かりますが、ダイヤ付きやシェル文字盤に至っては恐ろしい金額となっております。あっ、針は別料金ですよ。

それに、これはあくまで2011年時点での交換費用。恐らく現在では倍くらいになっているんじゃないでしょうか。

さらに近年では特殊な文字盤以外は元の文字盤を返却してもらえますが、返却料が掛かるように。高いお金を払って交換したのに、さらにお金を取るとは…。ただ、返却してもらわなければ逆に割り引かれるという謎対応となっております。

それと最後に。

ここまで文字盤の焼けを「ヤケ」と表記してきたのには理由があります。

このお時計、焼却炉に入れられて本当に「焼け」たものになります。

これが「焼け」と「ヤケ」の違いです。

ご理解いただけましたか?

文字盤はそのお時計を象徴する最も重要な部分です。

そこにヤケやシミ・劣化があると、どうしても目についてしまうでしょう。

査定も厳しくせざるを得ません。

一つ勉強になりましたね。